高松市では、今年三年目となる「保育所への芸術士派遣事業」を実施しています。僕もお手伝いしているNPO法人アーキペラゴが委託をうけて実行しているのですが、その報告展が今週末の日曜日の13時まで高松市美術館で開催されています。
芸術士のミッションなどは下記のサイトにまとめられていますので、ぜひご覧ください。
芸術士は、子どもたちの無限の可能性を信じ、子どもたちの感性と創造力を最大限に引き出す手助けをします。それは、あれこれと指示することではなく、子どもたちを見守り、励まし、豊かな感性を育てていくことです。
昨日、この報告展にあわせて、岡山にある一般社団法人レンドウの企画で視察の方々が高松に来られて、僕もご一緒しました。
午前中は実際に芸術士が活動している保育所を訪問し、様子を見学。子供たちとも短時間ですが触れ合う時間をいただきました。保育所内が建物の外も中も「アート!」に満ち溢れている様は圧巻。
全長4m近い壁掛けの大作。木の床の上に続いている色とりどりのライン。庭の木にぶら下がっている激しい色に塗られた椅子。この作品が生まれたプロセスを想像するだけで微笑んでしまうような空間です。内面からの「~したい!」という感覚が結果的に目の前の形になったのでしょう。迫力に圧倒されます。
報告展はじっくり見るには1時間は必要なほどの充実です。作品、写真のひとつひとつがいとおしさに溢れています。クスっと笑えるものから、唸ってしまうものまで。つい会場内の同行者を捕まえて、
「これ、すごいですよね。」
というように気持ちを共有したくてたまらない感覚。「いいね!」ボタンがあったら全部の写真に押していたかもしれません。
人間と芸術の距離感というものをあらためて感じさせてくれる時間になります。
報告展を堪能した後、アーキペラゴのオフィスで芸術士と事務局、視察された皆様とで交流会を開催しました。
印象的な言葉がいくつか流れました。
こんな大人もいるんだなと思ってくれるだけでいいんですよ(芸術士、Mさん)
高松市は、10年先の未来を見て戦略的に幼児教育を実施しているのではないですか?この子達が16歳になりはじめる10年後からは高松は恐ろしいほどの競争力を備えた街になることが実感できましたよ。対岸の岡山の人間として危機感を感じます。(岡山、Kさん)
結果としての作品だけでも既に売れるレベルのものがたくさんありますね。プロセスの面白さを考えたらほんと素晴らしい時間が育まれていると実感します。(岡山、Fさん)
子供たちがパワー全開、あるいはものすごい集中力で何かを創作している様子(しかもその集中力は伝染するのです!)、心の底からの笑顔や、興味津々の瞳を見ていると、ほんと嬉しさを感じます。と、同時に懐かしさを感じるのです。そしてなぜだか涙が出てくるんです。昨日は朝から夕方までずっと涙ぐんでいたと思います。
この感覚はなぜだろう。僕が理想と思っている子供たちの時間がそこに実現して流れていることへの安心感でしょうか。しかしほっとしつつもドキドキする。
僕たちが子供の頃にやっていたことが、ここで実現してますよね。(岡山、Fさん)
未来への閉塞感の中でついあきらめがちになっていることがたくさんあります。ところが、目の前の子供たち、報告展での子供たちの写真がそんな大人への警告を出しているのではないかと感じました。
「あきらめてるばあいじゃないぞ。」
そんないろんな感情が僕の涙になったのかもしれません。
素敵な子供たちと素敵な保育士さん、そして素敵な芸術士のジョイント活動が続いて行く限り、高松市の未来はサンサンと輝いているなぁとあらためて実感しました。